使い捨てを減らす傘が、コミュニティをつなぐ——アイカサがPALETTEで見つけたもの
- MIRAI LAB PALETTE 運営事務局

- 2 日前
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スマートフォンアプリで傘を借り、街中のどこでも返却できる傘シェアリングサービス「アイカサ」。使い捨て傘の削減を掲げ、2025年時点でユーザー数は80万人を突破し、近年は日傘のシェアにも事業を広げています。
同サービスを運営する株式会社Nature Innovation Group インフラ事業部 オフィスプラン担当・青木沙耶香さんは、2026年2月よりMIRAI LAB PALETTE(以下、PALETTE)にてPoC(実証実験)を開始しました。法人向けサービス普及の検証の場としてだけでなく、サステナビリティの学びやネットワーキングの場としてもPALETTEをフル活用する青木さんに、その経緯と得られた気づきを伺いました。
出会いは、サーキュラーエコノミーのカードゲームから
——まず、PALETTEとの出会いについて教えてください。
PALETTEのイベントではなかったのですが、2025年8〜9月頃に、サーキュラーエコノミーを体感できるカードゲームの企画に参加したんですね。その場にMIRAI LAB PALETTEコミュニティマネージャー 鎌北雛乃さんも参加者としていらっしゃっていて、名刺交換をさせていただいたのが最初のご縁です。そこでPALETTEのことを教えていただき、その後「PALETTEご縁日 (メンバー同士のカジュアルな交流企画)」などにもお声がけいただいて、少しずつ関わりが深まっていきました。
——PoCを始めるにあたって、当時のアイカサとしての状況はいかがでしたか。
2025年春頃から、個人向けのB2Cサービスに加えて、企業と直接契約を結び社員の福利厚生としてアイカサを提供するB2Bサービスへの注力を始めた時期でした。私はその担当として、いかに関心を持ってくださる企業に出会えるかを一番の課題として動いていました。飛び込みでアプローチをしても、なかなか聞いていただける機会は少ない。法人向けのサービスをどう広げていくか、試行錯誤していた時期です。
——そうした状況の中で、PoCに踏み切ったきっかけは。
東京都から、社会課題の解決に資するサービスの社会実装を支援する制度を紹介していただいたことがきっかけです。ちょうどネットワーキングを広げていた時期でもあり、チャレンジしてみようということになりました。2026年2月からPALETTEをはじめ都内約10か所に傘立てを設置し、PoCを開始しました。
「ここで見た企業が、自社に持ち帰る」——PALETTEだからこそ得られるもの

——PALETTEへの設置には、どのような狙いがありましたか。
他のPoC設置場所は、特定企業のオフィス執務エリアがほとんどです。PALETTEはその中で唯一、複数の企業が集まる複合型の拠点でした。新規事業や新しい取り組みを模索されている方も多い場所ですから、傘立てを目にした方が、自社へ持ち帰って導入を検討してくださるかもしれない。PALETTEにハブになっていただくイメージで設置をお願いしました。
——実際に設置してみて、どのような発見がありましたか。
PALETTEの傘立ては、アプリがなくても直接引き出すだけで借りられる仕様で、アプリ利用と非アプリ利用の2つの方法を案内しています。他の企業オフィスではアプリ経由の利用が多いのですが、PALETTEではアプリなしで借りる比率が高く出ているのが興味深いところです。また、ランチタイムの利用は少なく、外出時に手に取る割合が相対的に高い。ここから商談や外出に向かわれる際に使われているのだと思います。視認性の高さが、使われ方にそのまま反映されている感覚がありますね。
——課題として見えてきたことはありますか。
ご縁日でアンケートを取ったのですが、アプリなしで借りられるという利用方法がまだ十分に伝わっていないことがわかりました。「わかりやすい」「どちらとも言えない」「わかりづらい」がほぼ同じ比率で出てしまっていて、他の企業への設置と比べると、使い方の伝わりやすさに差があります。サインや案内の工夫が今後の課題です。
——返却率についてはいかがでしたか。
アプリを介さない利用では課金の仕組みが働かないため、紛失が増えてしまうのではと懸念していたのですが、2か月を通じてほぼ100%の返却率を維持できています。一般のコンシューマー向けサービスと比べても高い水準で、皆さん想定以上にルールを守って返してくださっているのが嬉しい驚きでした。
——今後のPoC計画について教えてください。
東京都との協定に基づくデータ収集は2026年3月末で一区切りになりますが、PALETTEへの設置についてはアイカサ独自の取り組みとして2026年7月末まで継続します。残りの期間は、利用頻度や満足度の目標に向けたカスタマーサクセスの施策を見極めていく予定です。また、2026年4月ごろには折りたたみ式の日傘も追加導入する計画で、梅雨から夏にかけての利用データも積み重ねていきたいと思っています。日傘は男性の2人に1人が試してみたいというアンケート結果もあるほど関心が高まっていますので、黒・グレー・ベージュのカラーをそろえた大ぶりのサイズで、ぜひ男性にも手に取っていただきたいですね。
つながりが生む、信頼ベースの商談——ご縁日とイベントがつないだネットワーク
——ご縁日にも出展されているとのことですが、どのように活用されていますか。
これまで3回出展させていただいて、傘立てを会場に持ち込んでの体験イベントやアンケート収集も実施しました。PoC中のデータ収集という意味でも大変役立っているのですが、それ以上にネットワーキングの場として本当にありがたい場所です。
——展示会などとの違いを感じることはありますか。
外部の展示会では、名刺交換をして面談を打診しても返信が来ないことが珍しくないんですね。でもPALETTEでの出会いは全然違って、鎌北さんが「この方に会ってほしい」と連れてきてくださったり、紹介してくださったりする。信頼ある方を介した紹介なので、先方との距離感が最初から違います。面談に至る率がほぼ100%に近い感覚があって、スピード感も全然違います。
——具体的に商談につながった事例はありますか。
ご縁日でご一緒した、ある社団法人に関わっている方を通じて、その方がお勤めの会社をご紹介いただいたことがあります。そこからさらに社内の担当部署に繋いでいただいて、実際に面談させていただきました。自社での傘に関する課題もヒアリングできて、実証実験への参加を前向きに検討いただいている段階です。傘立て設置スポットの拡大に向けて、施設や駅周辺への設置について情報交換を続けてくださっている企業も何社かいらっしゃいます。
——hubでのイベントへの参加もされているとのことですね。
サステナビリティ関連の読書会や、ある企業の研究成果を聞きながら参加者が一緒に議論するワークショップなど、関心領域に沿ったプログラムに月1回ほどのペースで参加しています。PALETTEのイベント案内メールは、面白いテーマが多くてついつい確認してしまうんですよね。サステナ系のテーマも多い印象で、スルーできないんです。
——サステナビリティへの関心は、仕事以外の場にも広がっているそうですね。
実は仕事と並行して大学院に通っていて、サステナビリティをテーマに研究しています。前職の総合商社でサステナビリティ関連の新規事業開発に携わるなかで、環境問題と事業の両立という壁に何度も直面したことから、アカデミアの視点でその突破口を探りたいと思ったのが動機です。サステナビリティへの関心を知っていただいている鎌北さんが、関連するイベントをいつも案内してくれますし、そこでの出会いが後日の商談につながることも実際にあります。ネットワーキングと学びが同時に深まっていく感覚で、個人としてもめちゃくちゃフル活用させていただいている感じです。
コミュニティの中で、視野を広げ続ける

——2026年7月末のPoC終了後も、PALETTEとの関わりは続きそうですか。
事業面では、ご縁日を中心としたネットワーキングを続けて、法人顧客との接点を育てていきたいと思っています。個人としては、サステナビリティ系のイベントに参加するのが中心でしたが、PALETTEではスタートアップ支援や新規事業関連のイベントも充実しているので、そういったセミナーにも参加してみたい。アイカサの新しいアイデアや事業展開のヒントにもなると思うので、楽しみにしています。
——PALETTEの使い方として、今後やってみたいことはありますか。
これまでは、イベントが始まる直前に伺うスタイルが多かったのですが、外出の後に夕方まで腰を据えて仕事する場としても活用してみたいと思っています。ご縁日で名刺交換した方と作業スペースでふとお会いして少し話す、みたいなこともあるかもしれないですし。そういう偶然の積み重ねが、ここならあり得ると思っています。
——最後に、PALETTEについて一言いただけますか。
もうもらいすぎているくらいありがたい場所で、本当に感謝しています。baseでのPoCやご縁日にブース出展させていただいているだけでも十分すぎるくらいなのですが、招待制のイベントも含めて、ネットワーキングと学びの両方が深まっていく。自分自身の視野を広げるという意味でも、これだけ多様な企業や人が集まるコミュニティはなかなかない場所だと思っています。これからも、ぜひ関わり続けさせていただきたいです。


