体をほぐすと、人はつながる──矢田彩乃さんが「心と体の調和」をPALETTEで届ける理由
- MIRAI LAB PALETTE 運営事務局

- 2 日前
- 読了時間: 9分

「心と体の調和」を意味する社名のもと、ヨガやピラティス、トレーニングを組み合わせたコンディショニングに取り組む、株式会社HATHA(ハタ)代表の矢田彩乃さん。15年以上にわたり、運動と心身の指導に携わってきました。MIRAI LAB PALETTE(以下、PALETTE)では健康をテーマにした体験会を重ね、2026年4月にはコワーキングスペースでの新しいウェルネスの可能性を探る実証実験にも挑んでいます。ヨガ講師としての原点から、PALETTEで見つけた手応えまで、じっくり伺いました。
祖母の介護が、すべての出発点だった
――まず、矢田さんのご活動について教えてください。会社名にはどんな意味があるのでしょうか。
社名のHATHAは、サンスクリット語でヨガに由来する言葉で、「心と体の調和」という意味を込めています。私自身、ヘルスケアの仕事はヨガ講師として歩み始めました。
――ヨガの道に入ったきっかけは何だったのでしょう。
少し変わった経緯かもしれません。母方の祖母が認知症になり、母が付きっきりで介護をしていたので、実家が近かった私も、月に一、二回は手伝いに通っていました。あるとき、夜中に豹変した祖母の姿を目の当たりにして、強い衝撃を受けたのです。穏やかだった祖母とはまるで別人で、その光景が忘れられませんでした。自分の両親もいつかこうなるかもしれないと考えたとき、大切な人が困ったときに力になれる自分でありたいと思うようになりました。
ちょうど二十代で、次の道を模索していた時期でした。さまざまな可能性を考えるなかで、「心と体にいいらしい」とヨガに出会い、試しに通ったスタジオの先生に、心から感動したのです。
――その先生の何がよかったのでしょうか。
専門用語をいっさい使わず、まったく知らない人にもわかる言葉で伝えてくれたことです。初心者向けと書いてあっても、専門用語ばかりで戸惑う教室は少なくありませんでした。人は理解して初めて、その良さを実感できるものだと思います。あのときの体験は、いまお客様の体を整えるときに、いちばん大切にしている姿勢につながっています。
――現在は、独自のメソッドの開発も進めていらっしゃいますね。
はい。ヨガ講師を続けるうちに、ある葛藤が生まれました。週に一、二回通ってくださる方が、来たときは表情が沈んでいても、一時間のレッスンで晴れやかになって帰っていきます。けれども次の週には、また同じ重さを抱えて来られるのです。自宅でのケアをお伝えしても、働き盛りの三十代から五十代の方には、時間も気力も残っていないことが多いものでした。
その繰り返しのなかで、自分のやっていることが小手先に思えてしまい、もっと根本から整えたいと考えて会社を立ち上げました。いま開発しているのが、骨格から整える独自の「骨Tuneメソッド(コツチューンメソッド)」です。猫背を筋肉の伸び縮みだけで直すという従来の考え方ではなく、まず骨を良い位置に戻して神経を働かせ、筋肉には最後にアプローチしていきます。そうした順序のほうが、体は変わりやすいと考えています。忙しい方が自宅でも自分でメンテナンスできる形を目指しています。
雑談から始まった、PALETTEでの実験

――PALETTEを知ったきっかけを教えてください。
本当に偶然でした。プログラミングスクールで同級生だった起業家の方が住友商事のOB社員で、PALETTEを紹介してくれたのです。当時の私は、起業したい気持ちはあっても、何で起業すればいいのかわからずにいました。そのころちょうど興味があったデジタル分野で仮に仕事をするならエンジニアと話せる共通言語が必要だと考え、そのスクールに通っていたのです。卒業後に再会したその方が、「こういう場所があるから使ってみては」と教えてくれました。2023年ごろのことです。
――最初のイベントは、どのように実現したのでしょうか。
鎌北さん(MIRAI LAB PALETTEコミュニティマネージャー)との雑談から始まった気がします。「いま、こういうことをやっていて、こんなことを試してみたい」とお話ししたところ、鎌北さんがとても軽やかに「やりませんか」と背中を押してくださいました。具体的な構想が固まっていたわけではなく、自分にできることをお伝えしながら、PALETTEのメンバーが求めていそうなことを、一緒にすり合わせていったのです。
――第一回は「肝活マネジメントランチ会」だったそうですね。
はい。当時はダイエットの仕事もしていて、その要が肝臓の活性化にあると実感していました。忙しいビジネスパーソンも、食生活が不規則になりがちです。肝臓をいたわる食習慣を整えれば、健康にもつながります。これを講座にしたらどんな反応があるのか知りたくて、ご提案しました。私にとっては、新しいテーマに挑む実験的な試みでした。
――その後、椅子でのストレッチ体験会、睡眠の質を高めるヨガと続きます。
肝活が新しい挑戦だったのに対し、二回目と三回目は、自分の得意分野に立ち返りました。二回目のChair Wallストレッチ体験会は、椅子に座ったまま仕事の合間にできる内容です。「こんな風にストレッチができると知れてよかった」「仕事の合間にやってみます」という声をいただきました。三回目の、睡眠の質を高めるキャンドルナイトヨガでは、リラックスできた、体が伸びて気持ちがいい、と感じていただけたようです。
――三回のなかで、印象に残っている場面はありますか。
睡眠の質を高めるヨガの後に、二十人ほどで交流会を開いたときのことです。運営スタッフの方から、「これまでのイベントのなかで、こんなにまとまった交流会は初めてです」と声をかけていただきました。料理を囲んで、参加者が自然と一つの輪になり、隣の人や向かいの人と語り合っていたのです。
――それは、どうしてだったのでしょう。
心と体はつながっているからだと思います。体がほぐれてリラックスすると、心も開きやすくなり、人との会話が生まれやすくなります。マッサージやストレッチのあとは、表情が柔らかくなりますよね。普段は話しかけづらいと感じる相手にも、すっと相談に行けるようになります。それは結局、仕事の効率にもつながっていきます。
この体験は、私の発想を大きく広げてくれました。体を動かすことを、ただのボディワークで終わらせてしまうのは、もったいないと感じています。たとえば組織においても、チームビルディングにも応用できます。定期的な軽い運動の介入が、個人の運動量を増やし、組織内のコミュニケーションを円滑にするという研究もあるそうです。フィジカルなアプローチには、まだ無限の可能性があると感じています。
15分の隙間に、何ができるか

――2026年4月には、女性会員向けの実証実験を行いました。
三回のシリーズを経て、四回目は私の方から鎌北さんに「こんな実証実験をしてみたいです」と相談を持ちかけ、セミクローズドな形で行いました。背景には、こんな問題意識があったのです。コロナ禍が明けて出社に戻る方が増え、オフィスで働く方から「休憩を取りたいけど、周囲の目が気になって席を抜けづらい」という声をよく聞くようになりました。一方、コワーキングスペースで働く方は、比較的スケジュールを自分で管理しやすくなっています。ミーティングとミーティングの合間の十五分で、移動せずに体を整えられる場所があれば、人は利用するのだろうか。それを確かめることが、今回の狙いでした。
対象は三十代から五十代の女性に絞り、関心のありそうな方を鎌北さんにご紹介いただきました。すると、八名の枠が募集開始から一週間ほどでほぼ埋まったのです。それだけ多くの方が、自分の体を良い状態に保つことに関心を持っているのだと実感しました。「就業中でも二十分あればメンテナンスしたい」「同じフロアにあれば使いたい」という具体的な声も、大きな手応えになりました。
――数あるコワーキングのなかで、PALETTEで実証実験を行った理由は何だったのでしょう。
数年間利用してきて感じていたのは、本当に多種多様な方が集まっているということです。業種も年齢も性別も多岐にわたります。若いスタートアップの方が中心という場所もありますが、PALETTEでは実にさまざまな方に出会えます。いろいろな業種の方からフィードバックをいただけるなら、ここがいちばんだと思いました。
――普段はどのようにPALETTEを使っていますか。
体を動かす仕事をしている一方で、座学用の資料づくりなど、パソコンに向かう時間も多いので、その作業や打ち合わせの場として利用しています。それから、関心に近いイベントには、なるべく予定を合わせて参加するようにしています。抹茶をいただいて瞑想する”Matcha Meditation”や、茶会を通じて新たな気づきを得る“みたて茶会 ”、また、福島県・浪江町のイベントなど、自分とは別ジャンルの催しに足を運ぶのも、楽しみのひとつです。
――5月27日には、ご縁日にも出店されると伺いました。
実証実験に近い内容で、15分で身体のもみほぐしと骨格を整える簡単なインナーマッスルトレーニングが15分で体験できるプログラムを提供します。
身体のもみほぐしも、疲労改善・疲労を溜めない身体づくりの観点では良いのですが、それではマイナスの状態をゼロに戻しただけで、プラスの要素が少ないため、健康をボトムアップするためにも、ただのもみほぐしだけで終わらせないアプローチをします。また、法人向けの出張整体、個人メソッド、双方のモニターになってくださる方や、健康に関心のある企業や人との出会いも生まれたらと考えています。こうした場に参加する意義は、その場のご縁から気づきや発見が得られることにあります。一度きりの会話だとしても、いろいろな方と話せること自体が、何よりの楽しみになっています。
続けることが、いちばんの近道

――健康を通じて連携していくなかで、PALETTEと組む意義をどう感じていますか。
やはり、いろいろな方とご一緒できることに尽きます。健康は、どんな年代の方にも、どんな業種の方にも欠かせません。意識の高い人だけが健康であればいい、というものではないはずです。多くの方に健康の知識を届けたいと考えたとき、PALETTEほどふさわしい場所はないと感じています。
――今後、PALETTEと一緒に挑戦してみたいことはありますか。
開発中のメソッドを少しずつ分解して、一時間ほどのプチ講座を、実証実験としてPALETTEで開いてみたいと考えています。たとえば肩こりなら、どんなメカニズムで起きるのか、どの筋肉にアプローチすればよいのかなど、楽しみながら身体のことを理解できる時間にしたいと考えています。2026年の下半期には、第一回をスタートしたいと思っています。
いまは、情報があふれる時代です。SNSや動画には体を整える方法が無数にありますが、多すぎて、結局何をすればいいのかわからなくなってしまいます。自分の体に当てはめられる基礎さえ押さえておけば、迷子にならずにすみます。だからこそ、一人ひとりに正しい知識を届けることを大切にしています。
――最後に、ウェルネスに関心のあるPALETTEのメンバーへ、メッセージをお願いします。
いちばん大切なのは、続けることです。そして、頻度がとても大切になります。
週に一度まとめて一時間運動するよりも、その一時間を三回に分けて、週三回、二十分ずつ行うほうが効果的です。とくに姿勢や骨格のゆがみに関わることは、頻度がものを言います。
たとえば二時間パソコンに向かったら、背中を丸める、反らす、ねじるといった動きを少し加えるだけでもかまいません。少しでも体をほぐす回数を増やしてあげると、積み重ねが確実に変わってきます。お金の投資も大事ですが、健康への投資も重要です。ぜひ今できることから始めてみてください。


