クルマづくりの次は、働き方づくり──トヨタがTOTONEで挑む「15分革命」
- MIRAI LAB PALETTE 運営事務局
- 7月3日
- 読了時間: 9分

疲れた時は休憩を取る──当たり前のことのようでいて、日本のビジネス現場ではまだまだ浸透していない文化かもしれません。そんな中、トヨタ自動車の新規事業として生まれた戦略的仮眠ツール「TOTONE(トトネ)」を、MIRAI LAB PALETTEにて2025年8月末日まで設置しています。
TOTONEは、トヨタが自動車で培ってきた快適空間を設計する技術や居眠り運転を防止する技術等を応用し開発した戦略的仮眠ツール。戦略的にTOTONEを活用することで頑張って働く方々の働き方改革を支援します。このTOTONEをPALETTEに設置した背景には、単なる商品展示を超えた「文化醸成」への強い想いがありました。
トヨタ自動車でTOTONEを担当する加藤彩綾さんに、コラボレーションの経緯や目指すビジョンについて詳しくお話を伺いました。
自動車で培った技術が生んだ「15分革命」
──まず、TOTONEについて教えていただけますか。
加藤さん:TOTONEは、トヨタ自動車の新規事業の一つで、質の高いパワーナップを体験できるプロダクトです。アイデアの起点の一つに自動車事故の中でも重症化率が高いと言われている「居眠り運転」があります。
居眠り運転が起こりやすい要因の一つに脳疲労というものがあると言われています。脳疲労とは簡単にいうと脳の疲れがたまっている状態のことを指します。、その疲労を取るには15〜30分の短時間睡眠(=パワーナップ)が効果的だと言われておりパワーナップを起点に何かできないかと考えていた際、脳疲労って運転手に限った話ではなくオフィスで働いているときでも溜まるよね。それなら、運転手だけでなく、オフィスで働く人たちにもトヨタの技術を活用して何か提供できるんじゃないかというのが発端でした。
現在の導入先としては、一人当たりの生産性や人への投資を特に重要視されている投資・コンサル・士業・IT関連の法人様や、交代制勤務で夜勤があるが集中力が大事になってくる整備士を抱える法人様やシェアオフィスを運営される法人様などがメインとなっております。

──どのような技術が使われているのでしょうか。
加藤さん:トヨタが自動車で培ってきた閉鎖空間でも快適に過ごすことができる空間設計技術や居眠り運転防止技術を応用しています。具体的には、空間やシート自体の心地よさに加えて、エアクッション、シートヒーター、光や音を組み合わせて快適な入眠・睡眠・目覚めをサポートする機能を多数搭載しています。利用してくださった方からは特に入眠時の、エアクッションが膨らんだり凹んだりしてまるで揺れているような感覚になる機能に関して不思議な体験ができたと好評いただくことが多いです。
是非その不思議な感覚を一度体験していただければなと思っております。
──PALETTEでTOTONEを導入することになった経緯を教えてください。
鎌北(PALETTE コミュニティマネージャー):PALETTEとトヨタさんは古くからお付き合いがあるんです。2022年にトヨタ自動車の世に公開していない技術を集めた展示会をPALETTEで開催した際、大きな反響があったんです。その後も継続的に、さまざまな連携が続いてきた中で、2025年に入ってから加藤さんをトヨタの方が紹介してくださったのがきっかけです。
加藤さんからは「単に『何台売りました』という話ではなく、しっかり頭の疲労を回復させて仕事の生産性を高めていこうという文化を醸成していきたい」というお話をいただいて、PALETTEとしてもそういった新しいチャレンジや文化醸成を発信していくことは重要だと思い、コラボレーションが始まりました。

「仮眠」=「サボり」と言われない働き方を作りたい
──文化醸成を重視された理由は何でしょうか。
加藤さん:「社員の生産性が上がりそうだからからいいよね」と導入をしてもらう一方で、実際に利用する際に「サボってるんじゃないかと思われるかもしれない」といった声があるということが分かったからです。
シェアオフィスのように自由度が高く、誰の目線も気にならない環境では使ってもらえるのですが、従来の会社組織では「疲れたら休んでもいい。休んだ方が効率が上がる」という文化がまだ根付いていない。だから、まずはそういった文化をTOTONEを起点に作っていけたらと思っております。
──日本の働き方について、どのような課題を感じていらっしゃいますか。
加藤さん:日本の時間あたりの労働生産性は他の先進国と比べて低いとよく言われているかと思います。もしかすると必要な物が足りなくとりあえずどんどん作れば売れる昔の働き方から脱却できていないのかもしれません。
昔は必要なものが足りない時代だったので、とにかく働きまくって作らなければならなかったのかもしれません。でも個人的に、今は必要十分すぎる時代なのかなと感じております。市場の環境は大きく変わってきているのに働き方はあまり変わっていないのかなと。。テレワークといった働き方や、業務を効率化するツールも多く出てきたけれど、標準労働時間は8時間のままでかつ残業もする。なぜ効率化されているはずなのに8時間のままなのか等、根拠も分からないまま昔からそうだからということでそのままな気がしています。
ずっと時間あたりの労働生産性が低いと言われているのに、残業はしており、結果として睡眠時間が削られたりしている。そして昼間に眠気を感じたり、なんだかやる気が起きなかったり。それで本当にいいのかと。企業単位で働き方改革といったものが動いているとは思うのですが、それだけでなく個人レベルでも生産性を高めるにはどうしたらいいかを考え行動を変えてみてもいいのかなと思っております。
──TOTONEはその解決策の一つということですね。
加藤さん:そうですね。ただ、全員が全員に当てはまるわけではないと思います。将来的に生産性が上がって、夜もきちんと眠れるようになったら、昼間の仮眠が必要なくなることもあるかもしれない。でもそれはそれでいいと思うんです。今は、これをきっかけに各々の働き方を考え直すきっかけを作りたい。「そもそもなぜ8時間も働いているんだろう」「なぜ生産性が低いと言われているんだろう」「便利なツールを入れて何が変わったのだろう」といったことを振り返る時間も必要だと思います。
PALETTEは「非公式アンバサダー」が生まれる場所

──PALETTEではどのような活動をされているのでしょうか。
鎌北:まず「トヨタ自動車×MIRAI LAB PALETTE 組織パフォーマンスを高めていこう」というテーマで、キックオフイベントを開催しました。イベントでは主に生産性を高めることの重要性についてディスカッションしました。
それ以降は毎週水曜日と金曜日の午後は、加藤さんはじめTOTONEチームの方々に常駐していただいています。そのタイミングでPALETTEメンバーの皆さんに声をかけて、加藤さんたちをご紹介したり、実際にTOTONEを体験していただいたりしています。
──PALETTEならではのメリットはありますか。
加藤さん:鎌北さんが積極的に人を紹介してくださるんです。PALETTEと同じような形で運営されているところもあるとは思うのですが、PALETTEではでは信頼できるコミュニティマネージャーが間に入ってくれるので、自分から率先的に話しかけにいく必要がなく、お互いに腹の探り合いをするところから始める必要がない。
また、PALETTEには自分で考えて動く方々が多く、そういう方たちと会話をすると良いアイデアをくれるし、私たちと一緒に考えて、すぐ実行に移せるーー。とてもいい環境だと思います。
鎌北:私自身がTOTONEの非公式アンバサダーのような感じになっているんです(笑)。本当に気に入っているので、加藤さんたちがいらっしゃるときは、なるべく相性が良さそうな方々をご紹介させていただいています。
実際に使ってみると、本当に頭がスッキリするんです。休日にお昼寝をすると1〜2時間寝てしまって、起きた時に「まだ寝足りない」「体が重い」と感じることがあるのですが、TOTONEでの15分の仮眠は本当に脳だけがすっきりして、集中し直せるんです。
コミュニティで未来の働き方を描く

──文化醸成の取り組みは今後も予定されているのでしょうか。
加藤さん:文化醸成はまだまだこれからですが、二つの方向から進めていこうと考えています。一つはトヨタ自動車内から。社員数の多いトヨタ内でこうした文化ができることで、社外への発信力も高まると思います。
もう一つは、地道に世の中に発信し続けながら。。いきなり「15分仮眠しましょう」という狭い枠で入るのではなく、まずは「がむしゃらに働くのではなく、リフレッシュしながらでいいんだよ。そうした方が生産性が上がるんだよ。」という大きなメッセージを掲げて、同じような思いを持ってサービスや商品を展開している方たちとも一緒に何か発信できたらいいなとも考えております。TOTONEで仮眠する以外にも、散歩やコーヒーなど、いろいろな方法がありTOTONEはその選択肢の一つと思っております。
──最後に、このコラボレーションを通じてPALETTEの魅力を改めて感じた部分があれば教えてください。
鎌北:こういうチャレンジができる場だということを伝えたいですね。トヨタ自動車さんは日本を代表する大企業ですが、そういう会社がこういう自動車の枠を超えた新しいチャレンジをしているということを知らない人は結構多いんです。メンバーさんに話すと、「トヨタ自動車さんって、こんなことやってるの?」とびっくりされます。
PALETTEだから気軽にチャレンジや発信ができて、メンバーさんも新しい情報に触れられるし、新しいネットワークもできる。そういう価値を提供できていると思います。
加藤さん:社内にとどまって考えるよりも、PALETTEでいろんな業界や立場の方々と話すことで、得られるものが本当に多いです。得たものをもとに、またアウトプットを出していきたいと思っています。
鎌北:私は「ご縁を大切にしている」ということを伝えたいです。これは単に「トヨタ自動車さんだから、こういった取組を一緒にやりました」といったことではなく、加藤さんの思いと人柄がすごく素敵で、そういう人と新しい取り組みを一緒にPALETTEでチャレンジ・発信したいと思ったからです。PALETTEの魅力は、そういう人と人とのつながりを大切にしているところだと思います。
TOTONEとPALETTEのコラボレーションは、単なる商品展示を超えた文化醸成への挑戦です。「休憩することで生産性を高める」という当たり前のようで実現が難しい働き方改革を、草の根的なコミュニティ活動から広げていこうとする取り組み。その先にあるのは、一人ひとりが心にゆとりを持って働ける社会の実現かもしれません。
8月末までの期間限定設置ですが、このコラボレーションから生まれる新たな文化の種が、どのように育っていくのか、今後の展開が楽しみですね!