【イベント開催レポート】WITH:AIRPORTS - 空港における新たな可能性を拓く〈MIRAI LAB PALETTE〉
- MIRAI LAB PALETTE 運営事務局
- 4月8日
- 読了時間: 6分
更新日:4月9日

2025年3月10日、住友商事株式会社が東京 大手町にて運営を行うオープンイノベーション施設
「MIRAI LAB PALETTE」にて、成田国際空港株式会社主催の ”空港における新たなイノベーション創出” をテーマにしたイベント「WITH : AIRPORTS」が開催されました。
本イベントでは、「空港 × まちづくり」や「空港におけるイノベーション創出」をテーマに、様々なゲストの方々をお招きして、空港の役割を単なる交通インフラにとどめず、空港拠点地域やスタートアップ企業との共創を通じた新たな可能性を探る場となりました。
基調講演:東京大学 出口教授による「空港を起点としたまちづくり」

イベントの幕開けを飾ったのは、東京大学の出口教授による基調講演でした。
講演は、「これまで都市開発は鉄道や港を中心に進められてきたが、これからは『空港』を核にしたまちづくりが求められる時代が来る」というインパクトのある言葉でスタートしました。
講演の中では、世界各地の*イノベーションディストリクトの成功事例の紹介や、日本における新しい「空港」を軸とした都市開発の可能性が提示されました。 *イノベーションディストリクト
イノベーションに必要な要素(企業、大学、行政、住民など)を特定地域(ディストリクト)に集積させることで、その地域の経済を活性化させること
海外の事例として紹介されたのは、ボストンの「ルート93」沿いに発展したイノベーションディストリクトの事例です。出口教授は、「成功するためには、アンカー組織を中心に、公(行政)・民(企業、市民)・学(大学、研究機関)がバランスよく連携することが欠かせません」と強調。これらのディストリクトが成長を遂げた要因として、「魅力的な公共空間」「ウォーカブルな環境」「住・働・遊が一体となった複合的な空間」の重要性が挙げられました。
次に、出口教授が関わる「柏の葉スマートシティ」の事例が紹介されました。もともとはエネルギー管理や交通システムのスマート技術を中心に進められていたこのプロジェクトが、今ではイノベーション創出の場としての機能を強化し、産学官の協力が進む「柏の葉アーバンデザインセンター」のようなプラットフォームが、持続可能なまちづくりの鍵となっていることが語られました。
講演の結びでは、「空港が単なる通過点ではなく、人々が交流し、新たな価値を生み出す場として機能することが重要です。成田空港の国際的なアクセス性と、魅力的な都市空間、さらに多様なプレイヤーの集積が加われば、世界に誇るイノベーションディストリクトとなる可能性を秘めています」との展望が示され、成田空港を中心とした千葉県や首都圏全体の産業クラスター形成への期待が語られました。
第一部:空港 × イノベーション(による・のための)まちづくり

続く、第一部のパネルディスカッションでは「空港 × イノベーション(による/のための)まちづくり」というテーマのもと、北海道エアポート株式会社 阪口 氏、三井不動産株式会社 渡辺 氏、成田国際空港株式会社 和泉 氏をゲストにお招きして、空港を核としたまちづくりの可能性について議論が展開されました。
特に注目されたのは、「地域における "玄関口" / "水先案内人" 」という新たな空港機能の在り方についてです。
地域との一体的な発展を目指していくうえでのハードルとして、以下のような課題、
・空港内における案内機能(総合案内と観光案内)の分断
・地域住民との持続的な協力関係の難しさ
がシェアされたと同時に、上記の課題を踏まえながら、空港として、地域の魅力を効果的に発信し、来訪者の関心を喚起する仕組みづくりについて、各空港での具体的な取組事例や展望を踏まえ活発な意見交換が行われました。
パネルディスカッションの後半では、「空港×まちづくりの『カギ』は何か」という問いに対し、パネリスト3名がそれぞれの想いをフリップボードに書き出しました。
- 「人 × 人」(阪口氏)
- 「広い視野と意思を持ったネットワーク作り」(渡辺氏)
- 「仲間、場、仕掛け」(和泉氏)
イノベーション創出の中心には「人」が最も重要な要素、かつ、その人々が広い視野と意志を持って仲間を探して、場に集まり、仕掛けを作っていくことこそが、「空港×まちづくりの『カギ』」だと語られました。
第二部:トークセッション「空港における新たな価値創出」

第二部のトークセッションでは、空港におけるイノベーション創出の具体的な取り組みや、その可能性について議論が交わされました。登壇者には、空港運営会社や関連企業、スタートアップの代表者が名を連ね、それぞれの視点から空港が持つ新たな価値について意見が交わされました。
まず、スタートアップ側からは空港との共創における魅力の例として、「飛行機出発までのスキマ時間に着目したアート、エンタメ領域のサービス展開の可能性」や「他インフラ施設との利用者の行動差異」が挙げられました。
「駅だと利用者が急いでいるケースが多いですが、空港では比較的時間に余裕がある方が多く、新しいサービスを試してもらいやすい」
「インバウンド向けサービスの検証にも最適」
空港運営事業者の視点からは、スタートアップとの共創により「人手不足解消」「地域接続の強化」「訪日客へのサービス向上」といった課題解決への期待が挙げられました。
一方、共創実現に向けたハードルとして、「予算制約」「ステークホルダーの多さ」などが挙げられ、「空港は数えきれないぐらいの事業者の集合体で成り立っている」と、鉄道などの他のインフラと比較した時の難しさが挙げられました。
セッションの後半には今後の展望として、空港との共創実現の魅力について「空港運営のシステム/オペレーションは世界共通」という点が紹介され、実現につなげていくための「空港間の連携強化」「合同イベントの開催」などのアイデアが議論されました。
まとめ
本イベントを通じて、空港が秘めている大きな可能性を登壇者、参加者の方々含め改めて実感する機会となりました。単なる交通インフラから、まちづくりの核へ、そして新たな価値創造の拠点へと、空港の役割は確実に進化しています。
人と人とのつながりを軸に、地域やスタートアップとの共創を進めることで、世界に誇れるイノベーション拠点となっていく未来が大変楽しみです。
MIRAI LAB PALETTE ラボ長 - 志津 由彦 メッセージ
私は旅が大好きでこれまで40か国以上に訪問していますが、今でも空港に行くだけで気分がワクワクします。今回、MIRAI LAB PALETTEの場を通して、空港における新たな可能性についてディスカッションできたことは大変嬉しく思います。
MIRAI LAB PALETTEでは引き続き様々な皆様とオープンイノベーションの取り組みを進めてまいります。